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ワクワク感

「川本」自己紹介をお願いします。

「荻原」演劇人、表現教育のファシリテーター、今年からはvistArtの代表をしている荻原千佳です。コロとお呼びください。




「川本」早速ですが、vistArtについて教えてください。

「荻原」一言で言えば、演劇で培った力をその他にも活かせるにようにするための団体です。ある体験をきっかけに、演劇で学んだ事は色んな事に応用できるんじゃないかと思ったのが最初でした。趣味なのか仕事なのか、プロなのかアマチュアなのか、40歳を目前にしてアルバイトをしながら生計を立てている人もいるのが現実の世界で、個人ではなくチームとしてつながれないかと思って立ち上げたものです。




「川本」きっかけとなった”ある体験”とは何でしょうか。

「荻原」コロナ前になりますが、野外の体験教育の現場でお仕事をしていました。多いときだと1日に4校ほどの依頼があったりしたので、ファシリテーターが足りなくなることもありました。その時に、急遽依頼した演劇の後輩が、準備の少ない中で見事に対応しきってくれました。演劇という世界で培った能力というのは、演劇以外でも通用すると確信した出来事でしたね。




「川本」ありがとうございます。確かに、演劇の世界で養われた力というのは、様々な場面で活躍しそうですね。

「荻原」大前提、仕事という面で見ればしっかりと研究をして知識をつけてというブラッシュアップは必要であると感じています。ただ、子どもたちにとっては、知識や理論で通ずるファシリテーターよりも、感覚的に子どもたちのニーズを捉えることができる俳優の能力は、ファシリテーターととてもマッチしていると思いました。それは、普段から人をよく見て、体現するという演劇の特性に起因すると思います。




「川本」凄く大事な部分ですね。コロさんだ大切されている演劇ですが、振り返って演劇に興味を持ったのきっかけはなんですか?

「荻原」高校時代にアメリカ留学した時「ドラマ」という授業がありました。この授業で即興劇みたいなものをやったのですが、日本では演劇をやっている人であっても、失敗する不安を抱えて前に出る時に躊躇してしまいがちだと思うんですね。それがその授業ではみんな臆せず堂々と前に出ていく(演劇専攻とかではないですよ、普通の高校生たちです)、そして失敗に対して誰も否定をしない。むしろ盛り上げていく。きっと失敗を責めないその姿勢、「all OK」みたいなその在り方が前に出ることを恐れない空気を創り出しているんだなと、衝撃を受けました。その経験から日本でも「表現教育」というジャンルがあることを知り、大学はそれが学べるとのことだったので、玉川大学の芸術学部に入学しました。すると、大学在学中に劇団に誘われたので、表現教育の経験としても自分が演劇を経験してみることは大事だと思って舞台に出始めたというのがきっかけです。




「川本」なるほど。何事も挑戦している方が身近にいると、自然と影響を受けていたのもしれないですね。大学から始められた演劇ですが、卒業後はお仕事として継続されたのでしょうか。

「荻原」はい!「柿喰う客」という劇団に所属していました。2012年に退団をしています。ここでは本当にたくさんの事を学びました。振り返ると2004年の旗揚げ公演から携わっては、数え切れないほどの思い出がありますね。その後は、個人で47都道府県を回って公演に参加したり、都内でスタジオを経営したりと、演劇を軸に活動をさせていただいている形ですね。




「川本」劇団から独立後も、多方面からのアプローチを含めて、ご自身もプレイヤーとしてご活躍されている積極的な姿勢には、今の学生世代には見習ってほしい部分ですね。そして、今年に入ってから立ち上げられたvistArtについて深掘りさせてください。こちら名前の由来というは何でしょうか。

「荻原」まずvistArtと書いてヴィスタートと読みます。vista(展望)とart(アート)の意味を繋げて作った造語です。そのほかに隠れた意味として後付けな部分もありますが、iこそ無いものの、visitで様々な場所へ訪れる、なんていう意味もあります。




「川本」このvistArtというのは何をする団体になるのでしょうか。

「荻原」まだ1月に立ち上がったばかりで、予定としている活動ばかりですが、簡単には演劇で培った経験をベースに、さまざまな仕事の展開をしていきたい考えています。例えば、チームビルディングです。演劇はチームワークバランスがすごく大事ですし、相手の良さを引き出しあうことで、より良いチームを目指します。それを様々な会社の研修やワークショップなどを開いて、広めていく活動などをしていきたいと考えています。1on1の対話やYouTubeチャンネルの開設など、まさにこれから企画を実行していくので、楽しみにしてください。




「川本」そう考えると、日常の色んなシーンに役立ちそうですね。

「荻原」はい。演劇から得られるスキルとして、代表的なものを挙げるだけでも、コミュニケーション、リーダーシップ、チームワーク、他者理解、表現力、読解力などなど、たくさんあります。それを多くの人に知ってほしいですね。




「川本」これは、演劇が役に立つ事を通して、やはりゴールは演劇を広めたいということなんでしょうか。

「荻原」最後はそうですね。あくまでも先に挙げたものは演劇を経験することで得られる学びに過ぎないので、やはり演劇そのものを楽しんで欲しいと思っています。日本ではまだまだ演劇って特殊で遠い存在で、少し余暇で楽しむエンタメとしては、敷居の高いものになっていると思います。だからこそ、もっと気軽にたくさんの方に演劇を楽しんでほしい気持ちは強いです。そのためのきっかけのひとつがヴィスタートになるといいなと思っています。




「川本」現在は何名ほど参加されているんでしょうか。

「荻原」現在はざっと20名ほどですね。もちろんその中でも積極的に活動している人は6名ほどだと思います。そもそも立ち上げる時に、これはどれくらい需要があるのか分からなくて、軽い気持ちでツイートしたら、2・3時間でたくさんの方々から応募というか参加希望者が集まってしまい、すぐに募集を止めました。それだけこのコンセプトに魅力を持ってもらえたという事実と、需要があることに驚きました。だから今は大々的に募集はしていませんが、お問い合わせをいただければ、お話をさせていただいております。




「川本」コロナ禍もあり、エンタメ業界そのものが衰退しています。こうして別の形で能力を発揮できる場所を作られたことは、ひとつの希望のように見えたかもしれないですね。まだまだ希望される方は多いように思うのですが、何か応募資格などあるのでしょうか。

「荻原」演劇経験3年以上という条件を出させていただいています。これは「演劇」を扱って様々な場所に波及させていく上でも経験がないことには机上の空論になってしまうし、なによりゴールはみんなが実際に演劇を体験することなので、vistArtに入りたかったらまずは演劇を経験しなくては、と思ってもらってもいいとさえ思って定めている条件です。もしかして変わるかもしれませんけどね(笑)あとはやる気があったらなおいいですね。個人的な裏目標として「自立」を掲げています。「演劇人のセカンドキャリアをつくる」という発想はvistArt内で仕事を生み、お金をまわしていく、という発想にとどまっていません。むしろ、そこで終わってしまうと結局雇われていることに依存してしまうと思うのです。なので理想はひとりひとりが自分で仕事を生み、まわしていけるようなビジネスパーソンとしての自立みたいなものも支援していきたいと思ってます。そしてそれはやる気がないとなかなか難しいかなと思っています。主体的に動くってエネルギーがいりますからね。




「川本」熱いですね。今やセカンドキャリアにしても、二の足を踏むケースは多いと思います。コロナ禍で休業に追い込まれる事業主さんは数え切れません。コロさんは実際に思ったことを行動に移されていますが、時には決めることへの不安であったり迷いだったりというのはありませんか。

「荻原」ないといえば嘘になりますが、もう動くしかないかなと思っています。体験教育の現場では知識だけでどうにもならない場面をいくつも見てきました。それらも影響してか、どうしたら不安が消えるのか、不安の種を紐解いては徹底的に行動します。そうすれば必ず生きていけると本気で思っています。




「川本」今の若者にも伝えたい熱量ですね。やりたい事がない若者や、新たな一歩を踏み出すことに躊躇している30代・40代の方も多いと思います。そんな方には、コロさんだと、なんてアドバイスされますか。

「荻原」やりな!って思いますね。迷っててもいいことないですよ。進まなきゃ。世の中、本当にいろんな人がいるから、もっともっと広い視野で見てほしいです。自分が見ている世界なんて本当にごく一部で、踏み出した先にはまた違った世界が広がっていることを知ってほしいです。




「川本」ありがとうございます。この記事がきっかけで、何か始める人が一人でもいたら嬉しいです。まだまだチャレンジを続けられるコロさんですが、コロさんにとって夢ってなんですか。

「荻原」日常の当たり前に演劇があるような世界にすることで。演劇体験は人生の彩り、生きやすさ、豊かさの一助となると信じていますので、広めていきたいです。




「川本」素敵な夢ですね。聞かせて頂きありがとうございます。最後になりますが、コロさんにとっての、エッセンシャル(人生に欠かせないもの)を教えてください。

「荻原」“ワクワク感”ですね。子供っぽいとも思うのですが、面白くなさそうなことはとことんやらずに来たタイプで、心が躍ること、挑戦し甲斐がありそうなことばかりを選んできた人生です。かなり刹那的だったとも言えますし、恥ずかしながら今まではあまり長期的にものを考えたり計画的に動いたりするタイプではありませんでした。ただ、最近はこのvistArtもそうですし、長期的にムーブメントを起こすようなことに非常にワクワク感を覚えています。もちろんそのプロセスは全て心地よく楽しいことばかりではないかもしれません。でもその先にあるワクワクが自分を前に進ませる、今はそんな感じです。もしかしたら少し大人になったのかもしれません。とはいえ方法は変化してもこれからもきっとワクワク感がないことに私は動かないと思います。これが私の生き方なのだと思います。




「川本」ありがとうございます。特にコロナ禍で余裕のない方が増え、世界中から楽しみが喪失している気がします。コロナ禍になり3年目に突入します。大変なことも多いともいますが、ぜひvistArt、そしてコロさんの演劇で、ワクワクを届けてほしいと思います。これからの活躍、応援しています。